たと伺ったからもしかすると、着かないのは余り珍しいなかみで、わたしのところへ来る筈のとは一寸様子がちがう、というわけではないのかしら。(勿論これはふざけ)
昨夜はちょくちょく起きましたが、大スピードで八時に床につきましたから第一回のまでに五時間ばかり眠っていて、あと途切れ途切れでもどうやら、きょうはよく働きました。けさ早く衣料疎開五十キロ五ヶというのを発送しに男が来ます。五時に起きてつらかったけれ共七時すこし過にモンペの紐を結び乍ら二階から下りて来たら、なかの口がパッと開いて朝日がさし込んで、そこを「お早うございます」といい乍ら、その男が這っているの。笑ってしまった。玄関のタタキに荷作りした菰包みがおいてございます。それを中から錠をあけなくてはならないから。
この男は小柄で黒いリスのような眼をしたヒシの実のような形の顔をした男で実に重宝男です。元来は煙突掃除だったのが生来の器用が時勢につれて「世に出て」(その男の表現)今では主として、荷物の世話をして「金に不自由はしなくなりました」荷作り、リアカーの運搬、いかけ、大工の真似、出来ないのはドロの方と植木屋の由。生きたものと、他人のもの
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