[自注3]いかめしい建物の庇合わい――市ヶ谷刑務所の建物――父の死んだ時、百合子はこの建物の中にいた。
[自注4]タンカの上で全く意識を失っていたときの様子――一九四二年七月、巣鴨拘置所で百合子が熱射病でたおれたときのこと。
[#ここで字下げ終わり]
三月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(和田三造筆「戸穏神楽舞」の絵はがき)〕
三月七日 余り手紙のつきがおそいからこんなハガキさしあげて見ます。きのうの帰途きょう、どちらもすぐ解除で安心いたしました。雪と雨とで壕がしめって大事にしまっておいた封緘の糊がくっついてしまったので、今コタツに入れて干して居ります。これから雨が多いとしめって困ることね。パール・バックの支那の空という小説があります、お読みになる気があるかしら。近作です。「大地」などとタッチが違い、書いている場所の相異を思わせます。
三月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
三月十一日 ウラに書くの、やめましょうね。裏と表とがぬけてしまうとつまらないから、ね。
二月二十三日のお手紙頂きました。ありがとう。今年のおそい大雪は、路をゴタくりにい
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