のは。実に解せません。しかし、東京で現に五分前まで一緒の家の壕にいた我娘が遂に行方不明となった人があったりします。いろいろの場合を思いやり、生きるために努力したことを考えると涙が出ます。友ちゃんと子供らの顔にはげまされて、力をふるって自分を救おうとしたのでしょうのに。可哀想に。可哀想に。
 島田までゆけば一週間や十日で戻ることは不可能です。少くとも、暮しの見通しがつき、気持の落付きがいくらかできる迄はいてあげなくてはなるまいと思います。経済上の問題も深刻でしょうと思います。トラックを処分したりして目前にはいくらかのゆとりをおもちでしょうが、タバコと米配給の手伝い丈ではなかなかやれますまい。合同の方の仕事の権利を応召のときどういう契約にしていったか、それによっては代理として人を雇い、そのものにうちから月給を払って働いてもらうということも、これから先、人の余るときには可能でしょう、反面に不可能の条件もましますが。
 こういう事情になって、そちらへは本当にいつ行けるのでしょう。しかし、今島田へゆくことに論議の余地はないと思い、そのようにいたします。私の判断で最善をつくしますから御心痛ないよう
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