しも立たなかったのが不幸中の幸でした。明早朝買いにゆき、買えたら最も早い機会で立ちます。多分新潟まわりでしょう。
 友ちゃんのこと、子供らのこと、お母様のお心のうち万々お察しいたすにあまりあります。健気にぐちも書いていらっしゃいませんが、どんなお気もちでしょう。申しあげようもありません。此の上は、隆治さんの無事に還る日が一日千秋です。(在外邦人はみんな帰すそうです。八十万内地に戻るそうです。)
 ともかく行って出来るだけおなぐさめもし善後策を講じ、行方をさがしましょう。心のこりというのはこのことです。三日も命があったというのにね。トラックにのって行ったらその番号の車がどこでどうなっていたかさえ分らないというのは。混乱の程思いやられます。二十六日づけのお手紙です。きょうはもう四日、九日経過しています。新谷という人は多分死去してしまったでしょう。トラック番号をきくことさえ手がかりを失ったかもしれません。隊の解散がひきつづきましたから責任不明となり、本当にわるいめぐり合わせでした。わたし達も其だけの負傷をして、相手が原子である以上、覚悟して処置しなければなりますまい。其にしても行方不明という
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