のに当り、今だに苦笑いたします、おまじないの方は一寸思い当る方法ございませんね。わが身を小さき珠となし、その懐に眠らばや。
一月三十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
一月二十九日
きょうは、大御無沙汰のあとで久々にゆっくり書きはじめました。しかもきょうの手紙はね、百合子というだけのさし出し書きではすこし不足で、危くふっとぶことを免れたブランカより、という風な書きかたが入用です、昨夜九時すぎに来た一機が照空燈(サーチライトをこういうのよこの頃は。)に捕えられて上空に来かかり、きっと割合腰抜けだったと見えて周章していきなり、ポタンコ ポタンコとやりました。京浜地区警戒を要すというラジオでいつも壕へ入る仕度いたします。菅谷夫妻は、いつも泰然ですが、昨夜はいち早く来て主人公外へ出て、壕のふちに立っていたら、来ましたよ、来ましたよ、ホラそこ、真上でいやがる、というの、わたしには全然見えません。入りましょうよ、と細君と壕に入ったらとたんに何と云ったらあの音響と地響が表現出来るでしょう。つまり夢中になってしまうような音がして叫ぶようにキューンという鋭い音がいたしました。思
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