わずかたまってちぢみこみました。又、キューンというの。焼夷弾よ、見なくちゃ、さア、ととび出して見ても分らない、うちに、パン、パーンとごく近くで落ちたのが爆発する音がいたします。近いわ、そのつもりで。とわたしは二階へかけ上り、あっちこっちあけて様子を見たら南の高村さんの屋根の裏がもう火の手です。やっぱり電話局よ、白いからね、と見ているうちに火はひろがり外へ様子見に行った菅谷君の話では電話局の前の通りで林さんというお医者もやけてしまったらしいとのこと。細君は、肴町の通りの春木屋という鳥やね、あすこが生家ですから、そっちを心配し御亭主はかけて見にゆきそこらの状況が分りました。細君も実家を見にゆきたいというのよ。風が北だからこっちは安心だから行くといいわと云ったら息せき切って戻って来て、奥さんそれどころじゃありません、団子坂の角がやけていて門の前から非常線で通れません、というの。じゃ一寸見て来るから、と門へ出たら門から非常線で団子坂の角の米やがあったの御承知でしょうか、あすこから鴎外の家のあったところ、そのずーっと先まで火の由。いろいろの情報を綜合してこちらは丁度巨人の歩幅の間に入った小人のよ
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