にいくらか連関があることですが、今年のはじめになって、一つの極めて有益な発見を(自分について)したことについて申上げましたろうか。別の面からはお話したように思うけれど。それは、目白にいた時分(十四年頃でしたろうか)あなたが私の仕事がジャーナリスティックな影響をうけすぎているとくりかえしおっしゃったことがありました。当時私はその警告がわかっていて、やっぱり分らなかったと思います。昨年の秋以来の見聞でわたしはどの位成長したか知れないと思います。自分の俗人的面が事にふれて痛感されたし、生活や文学について、私としては最大に(これまでと比較して)沖へ出て、明日への精神をよみかえしてみたら(この春頃)そこには根本に誤った理解はないけれども、話しかたに全くあなたのおっしゃった点が自覚されました。文章に曲線が多すぎ、其には二つの原因があります。一つは、高貴なる単純さを可能にしない理由によります。他の一つは、そのジャーナリスティックな影響であると思いました。よほど前の手紙に書いたように、あの時分わたしは面をひろくすること、接近することに熱心になっていて、その半面で足を掬われるところが生じていたのであると
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