は一度行ったことがあります。たしか網走湖というのがあって、汽車が網走へ行く前四五十分程の間軌道の両側一面にオミナエシが咲いていました。僕はまだ殆ど少年と云ってよかったが一人でつめたいオホーツク海で泳ぎました。」「僕の四十四歳の肉体は肉体としても十分使用にたえること、毎日六時半に出発して四時半にかえる迄、その間[#ここから横組み]10分,10分,20分,10分,2時半、10分[#ここで横組み終わり]の休みあり――円匙十字鍬をふるい、モッコをかつぎ、トロッコを押して決して他の兵隊に劣らない。」「文庫本一頁読むヒマもないが不断に勉強していること。境遇は僕を奴隷とし能わぬ如くであります。」そして、きょうは網走で馬車馬の競争を見た話のハガキがありました。橇をつけて走るのですって。砂地の上を。わたしは雪皚々たる一月の晴天に、橇をつけた競馬を見ました、馬種改良のためにはその方がいいのですってね。信州での生活も変りましょう。あらゆる境遇に処することを修得したものがいよいよ日本のために役立つわけでしょう。そして殆ど全人口が、それぞれの形でそれぞれの修業をしたわけです。
庭は桔梗の花盛りです。青草が荒れ
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