いきなり底の底までつき抜けてしまうけれども、今のところ既定の方針を格別変えず、網走へ行くことを中心に考えて居ります。こちらは何の話もする人なしきく人なし、山の風雨だけでしたが、東京はいろいろもっとで切符のこともなかなかはかどらないのではないでしょうか。待ち遠しさはひとしおです。ここの周囲が農民や教師が主で、急に生活事情の激変する人がないため、太郎なんかのためにはいい場所と云えると思います。食糧事情があるし、咲や子供たちは当分(何年か)ここに暮しつづけるでしょう。国は生計の必要から少くとも何かしなくてはいけないでしょう。こうやって寝ころがってはいられますまいから、これはいずれ上京するでしょう。わたしのことは、ともかくお目にかかった上でのことで、今のわたしにそれ以外のプランはありません。
親しい友人たちに大した被害のなかったのは幸です。てっちゃんのところも家族を仙台にやって、さてあすこがあれ丈蒙ってどうかしらと思ったところ無事、世田ヶ谷の家も無事。鷺の宮も家としては無事でしょう。卯女の父さんが信州に居ることは申しあげました。たよりが来て、オホーツク海で泳いだことがあるのですって。「網走へ
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