なくなってしまうかもしれない場所へも行くだろうと思います。ここや東京やそちらと全く雰囲気の違う(家ではなくてよ、地方としてよ)あすこのことを考えると、あなたは誇張とお思いになるかもしれないけれども、わたしは涙を落さずに行く決心が出来ません。どうしても一度おめにかからないうちはいのちを惜しいと思います。
わたしの二ツに挾まれた切ない心もちを御憐憫下さい。そして何かよい智慧をかして頂けたらと思います。多賀ちゃんに何かとお力になるように手紙出しました。
今までとちがってあれこれの事情を綜合して考えると、お母さんのおこころのうちを思いやらずに居られません。余りまざまざと映るので、わたしは本当に切ないのです。そしてあなたも、ね。もし当分どうしてもそちらへ行けないと決定したら仕方がないから、わたしはともかく、お見舞に島田へ行って来ましょう。其も出来るかどうか分らないけれども。そしたらきっとわたしの切なさも幾分晴れるでしょう。わたしとしては、どうしてそうしてくれなかったかと、あなたが遺憾にお思いになるだろうと思うことを、そのまま放っておくことはやはり出来かねます。
つまりはしなければならないと
前へ
次へ
全251ページ中201ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング