しれません。そしたら目白の家でつかっていた丸形のをお医者様のところから引上げてでも来るしかないでしょう。一休みして、二階へ干したふとん始末に上ったら又ここでも水騒動。太郎が生れたときこしらえた大ダライに水を満々と張ったはいいが、いつも風呂場のタタキにあってわからなかったスキがあって畳がすっかり水を吸っているというさわぎです。バケツでかい出して屋根からすててね。漸々《ようよう》其でコメディア・フィニタ。ブランカも多忙でしょう? この頃は何でも老朽で、其を直せませんから、こうやって用が二重になったりいたします。
老朽と云えば毛糸足袋下。はいてみたら、何と云ってもこっちが暖いわ。いくら私がこしらえたって薄いものは薄いのですもの、あなたがおやせになったせいばかりとは申せません。今年はじめて別のをおはきになったのですものね、鷺の宮であなたの足袋を縫ってくれるというので、ネルや帯芯をもってゆき、もう出来ましたって。近々足元がいくらかましにおなりでしょう。鷺の宮やてっちゃんは、歳月で褪せない暖いこころがあって、うれしゅうございます。
「風に散りぬ」の話というのはね、この間偶然、あちらに永年いた婦人
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