そして遂にノミを(くわれつつ)剋伏させます。ここが面白いのよ、そう思うと、よくくりかえしおっしゃった事務的能力が、どんなに大切かということも分ります、だって生活が混乱すればするほど些末な用が増大して労力は益※[#二の字点、1−2−22]大になり、其を益※[#二の字点、1−2−22]精力的に処理しなくては、人間らしいところ迄辿りつけないのですもの。わたしが、一日の間におどろくべき断続で本をよみ、一冊の本をよみ終せ、まとまった印象を得、批評し得る、という能力だって、人によれば刮目して其可能におどろきます。しかしこれはわたしの少女時代からのもちものよ、ありがたいことだと思います。そういう能力が、あらゆる面に入用だと思います。
 本と云えば、そちらの本どういう風に御入用でしょう、今月の一枚の封緘は、きっと島田へ行きましたことでしょう。何をお送りいたしましょうね、〔約百五十字抹消〕
 メリメはナポレオン三世の側近者だったって? そう? つまり彼のあわれな木偶としての境遇の目撃者であったというのは本当かしら。「柳の衣桁」の教授が書いたものの中に出ますが。アナトール・フランスは、この部分で「人間に対
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