です。そして、小作させました。そのために現在でもここは大地主が多くて、土地に自作農が少い場所です。純真な気持で福祉を考えて開墾した祖父が完成後に心に鬱するところ多かったのも、一つにはこういうことが原因だったのでしょう。祖父は、村から住む丈の土地、野菜をつくる丈の畑を貰って終ったのですが、猪苗代疎水事業の組合があって、そこに巣喰う古狸がいてね、横領で二十年間に資産をつくり現在強制疎開を口実にうちの地面にわり込もうとして小作に拒絶されつつあります。昨夜その男が来てね「わたしはハアああいう信用ねえ人間とはつっかわねえことにしています」と意気ごんで云って居りました。何かコンタンがあると誰しも云っています。この男は、いい畑をつぶして田にして(「農業営団」にうりこんで)疎水の水をまわすとうまいことを云い今もってそこは田でも畑でもないものになってしまって水はカラカラ。今までの田から水を引くと云ってみんなに反対されているようです。うちの畑もあやうく失くなるところでした、そしたら今たべているジャガイモもキャベジもなかったわけです。大した大した恐慌でしたろう。雨が多かったのに急に暑くて湿気の多い畑のジャガ
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