図や中華国語はつきましたろうか。それとも津軽の海へのおくりものとなったかしら。それに、わたしが書くいろんな話もどういう風に届くのでしょうね、魚どもには、こういう字はきっと余り美味ではないでしょうのにね。普通に出すより書留の方が何だかましのように思えますから、これはそうするわ。この辺ですと危険な音響の方向もはっきりしているし、空気の震動も単純で林町の壕で聴く地獄の中のようなこわさはありません。対策ありという危険感よ。十分気をつけますから、呉々もお大切に。涼しすぎますまいか、おなかは大丈夫? ペコの方は? では又。
 七月三十日
 きょうも汗の出る位の日になりました、午前中、爆風で塵のおちた部屋部屋の掃除して午食まで一寸一休みのところ。気もちよく南北の風が通って、机の上の螢草の葉をそよがせて居ります。正午のニュースが、声というよりも大空の皺めいた感じできこえています。
 そちらのお天気も快晴? そして快く風が通って居りましょうか? 数行「柳の衣桁」をよみました。ローマ人は誇張の多い凡庸な国民であったということや、実利的で戦争もその点から行ったということや、ベルジュレ先生が、哀れな彼の室で弟
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