酔い、人当りいろいろ毒素は放散されますものね。
親舟子舟のいきさつは、相当もう保証つきと思われます。子船としての便宜、というようなこせついたことを考慮する段階は主体的にも客観的にももう通過してしまったと思われます。子船が丈夫に役立つようになったというばかりではなく、ね。あの船たちは、綱を切られてしまうか、それとも、親船にきっちりとうまくはめこになって更に遠洋の航海に耐えるか、二つに一つという時をいつか経たと思います。そして、幸組合わせうまく造られていて、工合よく堅牢にきっちり航行態勢が整えられたのであると見えます。見た眼にさえその姿はすがすがしいでしょうと思うのよ。そして、人間の生活ということについて、すこし心ある人ならば、新しく思いを誘われるところもあるでしょうと思うの。そこに人生詩のかくれた力、芸術家たる所以、作品をして永生させる根源の力がひそんでいると信じます。人生は森厳であり、そこ迄行ったとき、初めて萎靡《イビ》することのない美しさ、平凡になり下ることのない高邁さが生じるので、もしそんなところに行けるとしたら、肺活量のゆたかさについて感謝しなくてはならないと思います。それにね
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