居りませんが、わたしたちの生活の中で、色調つよき年であったことは疑いありません、四月以降相当でした。でも、おかげさまで病気に戻りもしなかったからようございました、それというのもブランカとしてはここでどうしても暮す、という不動の目的があるからやれたので、さもなければ一寸辛棒しませんでしたろう。腹を立てたりしてね。特にわたしとして内部の収穫多き一年でした。船酔いでもありそうな日は、とあり、あんまり適切なので笑えました。あなたお酔いになる? わたしは、船と飛行機は駄目です、普通の酔いかたで、みっともないが単純なのではないのよ、到って行儀よくて何一つ胃から逆流させませんが、血液循環がどうにかなって、脳の貧血、全体の貧血が起り、眼をあけたまま夢中になってしまって、飛行機なんか下りて半日は病人です。それが一定の時間を超すと、そのまま死ぬのですって。閉口ねえ。ですから、船酔いのありそうなとき、良質の空気が助けとなるということの適切さは、それこそ命の素というわけです。あなたも、余り気持よくなさそうに船酔いでも、と書いていらして面白いこと。泳ぎの上手い人は酔わないのじゃないの? やっぱり酔うの? 尤も船
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