マアこっちはこうよという風に話せるでしょう、そしてそういう話もふむそうかとおわかりになりましょうしね。いいわ。そちらは、暗く重い東北よりもわたしの性に合います、わたしのジャガイモ好きから丈でも。わたしを育てたのはゲルンジーの乳牛ですが、ゲルンジーは今も居りましょうし。あなたが全く新鮮にそこの環境を吸収していらっしゃる様子を想像いたします。そしてさぞ感想は多くその共感を求め表現を欲していらっしゃることでしょうと思います。万葉の歌人たちは「古今」の歌人と比較にならないほど旅を大きくして居ります。しかし陸奥どまりでしょう、津軽の海は未知の境でしたと思えます。ましてやその辺は。日本のうたはそのあたりにも拡げられました。そこに美しい詩もうたも在るようになりました。面白いわね。関先生の折紙によって、一かどの歌人でもある由のわたしは、今にそこで、いくつかの秀歌をつくるかもしれないわ。そして一生に一冊だけは歌集も作ろうという空想も実現するかもしれません。ちっとも淋しくない寂しさ。ゆたかなる寂寥というものは生産的よ少くとも文学にとっては。そちらでの生活をたのしく想像いたします。人口がまばらだということも
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