らしらあけから盛に飛行機がとびます。子供飛行機――つまり練習なの。しかし夢の中でその音が刺戟となり朝はいつも何か空襲の夢を見るから閉口です。けさは、あなたが何だか助けに来て下すって、門の樹蔭のようなところにかがまって、甚だそういう場合であることを残念に感じながら目をさましました。実にひどい音なのよ。今丁度昼飯時で、空のブンブンも御飯に下りていて、しずかに鳥の声がきこえて居ります。
わたしは、梅干の種が一つ入っているお茶わんをわきにおいて又書院の棚のところに居ります。ブリュラールと。梅干は、ゆっくり横になっていて、御飯ぬかしたから(朝)お握りを一つもらってたべたからなのよ。梅干を入れて貰えるのは凄いでしょう?
ブリュラールは、ほんとに話すように書かれているので、これをよむと心が流れ出します。こういう珍しい休みの中にいて、こういう本をよむとわたしの全心が音を立てるように一つの方向にほとばしりはじめます。そして、書き出さずにはいられないの。
きょうほんとうは、もうここを立つ筈でした。ところが、東京へ国が来るための切符が又候出来ず、座席もない汽車にわたし一人乗って行くのもへこたれるので待
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