ち合わせ、明日一緒にということになりました。咲は、焼けたところを見ていないから、荷物の整理なんて、自分がしたときのように出来そうに思って、欲ばりよ迚も。ああいう火と爆弾の間を縫って何かしているような気分は、もう絶対に分らなくなっているようです。疎開なんて、その点いやねえ。作家なんかがいち早く疎開したら、一生のうちにとりかえしつかないピンぼけの一区切りが出来ます。昨夜その話が出て自認しているからはたが迷惑だよ、と笑いましたが。
ここにもよし切りが鳴いて居ります。カッコーカッコーカカカと閑古鳥もないて居ります。でも、ここでは不思議とうたが一つも浮んで来ません。ごたごた生活のせいもあるし、まだ用の途中でそれどころか、ここへ来ているのさえ用のうちだからでしょう。国も、全く、ね。わたしがわざわざ来なけりゃ動かないなんて実に、ねえ。
こちらでは、朝日新聞が東京から来なくなって福島民報一本立てとなり地方独立単位にはじまりました。毎日、読売、朝日と併合となっていますが、地方新聞の型を脱せず、国際情報なんかありません。記事の扱いかたもバランスが妙です。こういう新聞しかよめないのは弱ったことだと思いま
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