の策もあるかもしれません。せめて夜具フトンを、と頭を大ひねりです。〔中略〕
 チリヨケ目がねで大分注意いたしましたがきょうは目がすこしパシパシ。おや、今とんでいるのは29[#「29」は縦中横]の音よ。ラジオがないとこういうことになるのね。ではどうかお大切に。今は省線が不通です。

 六月十六日夕 〔巣鴨拘置所の顕治宛 福島県郡山市開成山より(封書)〕

 一九四五年六月十六日
 きょうは開成山からの手紙です。これは、いつ着くでしょうね、勿論明日わたしがここを立ってひどく混む汽車にもまれて東京へついて、それからそちらへシャツを届けに行ってそれでもまだ着かないことでしょう。もしかしたらこの次引上げの意味でこっちへ来る時分にやっと読んで頂けるのかもしれないと思います。
 こちらには、十四日に来たのよ。十日に来る予定でいたところ、うちの菅谷には切符なんか買え[#「切符なんか買え」に傍点]ない由で駄目。閉口してあきらめかけていたとき一馬という咲の兄が来て自分の切符をくれる話となりました。全く望外のことで大よろこびしたけれ共十二日に来るのが来なくて、やっと十三日の午後もって来てくれました。そこで急
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