外食券なしで買えるし、食べさせるのですから。いずれはうちも十一時までだから十時半などと云って団子坂の上まで列に立ったりするのでしょう。
 魚やから戻って、これから一寸することがあるの。小遣帳の整理です。小遣帳たるや、この私に[#「この私に」に傍点]二冊もあるのよ台所用。自分用。この頃は、出たところ勝負で買っておきたいものがありますから。そしてこれは、こんなものいるのかというようなもので。例えばね、この間、そこの帰りテープ買ったのよ、ゴムの。下着用の必需品。これが立売りしかありません。細いの一尺五十銭、やや太いの七十銭。六尺五寸ずつ(たった二組ずつのためです)それが七円八十銭かでしょう? これですもの。
 立売りは面白い現象です、アホートヌイ・リャード[自注8]に一杯立売りが並んでいてね、塩づけ胡瓜、卵、キャベジ、肉、殆ど何でも売って居りました。胡瓜なんかの価をきくときはパ・チョム? の方を使って、スコーリコとはきかないのね、スコーリコはもっとまとまったもので、百グラム何銭にいくらというような食品なんかみんなパ・チョムでした。それが一九二九年の十二月、西からかえったら[自注9]、一人もい
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