の育つ日の光りです。咲が帰って来て殆ど一週間わたしは公休でしたから、疲れもやっときのうあたりからぬけて、きょうはげにもよい心持です。久しい久しい間こんなに暢《のび》やかで、しずかで愉しい、気持ございませんでした。
きょうはね、一日ゆっくり二人遊びで暮せるのよ。素晴らしいでしょう。あっち二人は国府津の家を人に貸すについてとり片づけに出かけました。月曜の夜かえるでしょう。うちにはわたし達、あなたとわたし丈なの。それにわたしの疲れは休まっているのですもの。七時頃いい心持で眼がさめて、お喋りや朝のあいさつをして、なかなかあなたの御機嫌も上々のようよ。
すこし床の中にころころしていて、それから降りて来て珍しく紅茶とパンをたべました。パンがやっと配給になりましたから。但しお砂糖はこれ迄〇・六斤のところ又〇・一斤減るそうで、決して安心してサジにすくえません。でも、きょうは、こんなにうれしい日なのですもの、いいわと自分に云ってお茶をのみました。
庭へ出て、今ボケが咲いている、それを剪って来て小さな壺にさしてテーブルの上において、その花の下蔭というような工合でこれを書きはじめて居ります。
食堂に
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