の小包作りに紙がありません、売らないのよ。咲は紙やのかみさんに、局が受つけ個数制限していて朝でもう〆切りですよ、と云われたそうですが、さほどではないようです、但小さい局のしかしらないけれども。チッキが番号札もらうのに徹夜の由。うちの連中、あさって行くのにどうするのでしょうね、又誰か夜どおしさせられるのかもしれず、ひどいごたつきでしょう。どっちみち二十五日におめにかかります。

 四月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 四月七日
 ああ、しばらく。本当にしばらく。先月の二十日すぎ手紙をかき、あれから毎日落付いて書きたいと思いながら時がありませんでした。こんなことは、マア私たちの生活がはじまって初めてのことね。今来客と一緒に出て、ちり紙の配給を坂下までとりに行って、かえりにフリージアの花買っていそいで二階にあがって来たところ。もう四時半まで一時間半ほどは何があってもここは動かないつもりです。(と書いたでしょう? ところがその間に八百やとトーフと二度よ。)
 さて、咲枝子供たち出かけたこと(二十五日)は申しあげましたとおり。
 二十六日になって、何となくしずかだし頭の上が
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