れていると思います。そういう一応のもの[#「一応のもの」に傍点]のよりどころない口約束みたような本質、一定の条件の限りでの礼儀《エティケット》のようなものが、皆たががはずれて、ひどい有様ね。親切[#「親切」に傍点]というこころがいつしか本人も知らないうちに、利用価値にのりうつっていたり。こわいことね。信義というようなもののめずらしさ。
島田へは、行かないときめたときおみやげ送っておきました、母上と友ちゃん、草履(いいのよ、なかなか)達ちゃんへはしゃれた紙入れ。子供たちに積木と本。野原へは、二人に草履。冨美子は卒業ですから、本。役に立ちそうなのを集め八冊ばかり。かなりのものよ。岩本には薬の世話になるから先生に紙入れ(いかにも年輩の校長先生向なの)奥さんに帯あげ。上の娘帯どめ、下の娘机の上の飾り、男の子切りぬいて作るグライダー、という次第です。来年どうなるか分らないし、私は益※[#二の字点、1−2−22]貧乏でしょうから、ことしは、おみやげをけちけちしないで準備いたしました。小包あけて、きっと不平な人は居りますまい。
この頃鉄道便をうけつけませんから誰彼なしに小包つくるため、ユリお得意
前へ
次へ
全357ページ中71ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング