ないんだけれど、というところで。だからもしかしたら来るかと思ったので、炭をはずんだところ来ず、わたしが珍しい納りかたとなりました。机とかぎの手に、二月堂机をおいて。大したもので、お正月のようです、膝にも毛布かけて。その毛布たるやわたしが生れて百日目に札幌へゆくときくるまれて行ったという年功ものですが、なかなか暖いのよ、まだ。
 今年は、二日の手紙にかいたように昨年と暮しかたを変えて、自分の線をはっきりさせて生活しようと考えています、そのためにたとえばきょうにしろ、こうやって二階に落付いていられるのはうれしいの、そういう気分になれている自分がうれしいのよ。国咲は国府津へ行っていません。先なら気がもめてくしゃくしゃしたのに。生活の責任というものをどう考えているのかと思ったりして。Tも赤倉まで行って甘酒しるこも食べて、雪をすべってかえって来る位なんだから、こちらでこせこせ気をもむがものはないと思って。そこで、こうして静心《しづこころ》でいる次第です。わたしもいくらか修業出来たというものでしょうか。
 今年は又スペイン風邪大流行の由です。どうぞ、どうぞお大事に。わたしは経験があるから大きらいで
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