さった天賦としてそれを見て居ります。魯迅が細君にやっている手紙の中で、女のひとが、辛辣以上に出る例は稀有だ、と。わたしの修業の一つに其が項目となって居ります。むき出された鋭さ、鋭さをつつみかねる人間的器量の小ささの克服。もしブランカ的素質[#「素質」に「習癖(?)」の注記]のために、折角のあなたが、家庭的な細部から辛辣さを滲ませるというような癖になったら其こそ一大事です。わたしとして慚死に価しますから。ことしは一度もそういう苦情はお云わせしまいと思うのよ、確かにわるくないでしょう。わたしをその点で御立腹なさらないで下さい。そして何となくにくらしいみたいに思わないで、ね。
ことしは思いがけず「春のある冬」の続篇が刊行されました。ごく簡素な装釘です。でも、内容の美しさはひとしおよ。近刊の続篇は「松の露」という、実に清楚な、而も情尽きざる作品です。
文集には「珊瑚」というのもあります。めずらしいうたですから、月半ば以後におくりものといたしましょう。きょうはさむい日なのよ、雪がふったら面白いのに。では四日に。
一月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
一月九日
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