をよんだ、ということは、泳ぎにおける腕の一かきと全く同じで、一かきした丈は、体がそこへ出ている、ということを感じて、驚きをもって自分を考えました。そうあるべきだわ、それ丈の価値ある本は、そういう風によまれるべきです。ありがとうね。
 二十七日のお手紙。おっしゃる通り親戚も世界にまたがって存在するようになりました。六月頃出した緑郎の手紙が一日に来ました。ノルマンディーに侵入がはじまった頃のパリで、まだそこにいた時分の手紙です。ざっとよんだだけだけれども、環境の関係か、急所でピンボケのようで、すこし残念でした。同盟通信に働いたり、夫婦で交歓宣伝放送に出たり細君のリサイタルをやったりしている様子です。僕等の活動についてお知らせしますとあり、いろいろそういうことが書いてあるようです。空襲警報のとき来ておちおちよめなかったけれども。パリを去るようなことは無かろうと云って居ります。その後の経過で限界もひろげられ愚かな人たちではないから成長もするでしょう。但し「選良《エリット》」すぎるのよ、大使館、正金云々とね、細君のひっぱりや緑郎の親の七光りで。外国でこれは用心がいります、出先の大使館のぐるりの生
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