よみました。アンは利口な女性です、本をかくにも、話術を忘れません。女らしくきのきいた(機智のある)ものの云いかたの中に批評も反駁も主張もふくませる、という調子で、アメリカの所謂上流文化人の社交性の文字化されたような味があります。スカーレットの、何ぞというと男の眼ざしなんか丈気にしていた時代の女の利口さ[#「女の利口さ」に傍点]が、どの位前進して来たかを感じさせます。そしてアンは御亭主自慢を実に上手にいたします。一つだって直接に称讚なんかしないわ、もっともっとタクトがあって、リンドバーグと他の飛行家の談笑ぶりの間にリンディーの頸首のしっかりさのわかる好もしさのわかる会話を入れたり、北千島の濃霧にとざされたときのリンドバーグの勇戦ぶりを、全く飛行の側から、自分の恐怖の側から書いたりね。首ったけ、というところをいかにも器用に、読むものにもリンディーの好ましさと思わせるように話していて、一寸あれ丈のコツのわかっている女は、女流作家の会、あたりには見当りません。アンの精神はなかなか強靭ですし生活の幅もあります、こういう人が、ギャングに自分の子をさらわれて殺されたことを、自分の国の現代というものの
前へ 次へ
全357ページ中297ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング