でしょうね、相当上ったり下ったり右や左へ揺ま[#「ま」に「ママ」の注記]れながら、どこか陽気さを失わず、よろこんでひっぱられて来る子船を眺めて。裏表にかく方法はいかが? 確に不景気ですが、紙の貯蔵は少いから御辛棒下さい。
二十七日のお手紙をありがとう(きょうは十月一日)生存上の潤滑油というのは全くです、総てのいいことはそこからというところもあります、わたしは、そういう油のたっぷりさのために、香油づけのオリーヴの実のようなのね、くさりもせず干からびもせず。原始キリスト時代の人たちが、香油というものを特別に尊重したことをこの頃思って、その人たちの生活が、どんなにひどくて疲れるものであったかと思いやります。わたしも踵がズキズキするほど疲れたとき、ああ今もしこの足を哀れに思って暖い湯で洗い油でも塗ってもらったらどんなに休まるだろうと思うときがあります。あの時代の人々の生活、キリストという人の生活のひどさは、そんなどころでなかったのね、だから生活の苦労を知っているマグダラのマリアが、実に沁々と愛情をこめてその足を油ぬり、いとしさにたえなくて自分の金色の髪でそれを拭いてやったのね。キリストという
前へ
次へ
全357ページ中273ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング