、それをかきました。二十枚ばかり。「白藤」と名づけました。
本になったらどうぞきびしく読んで下さい。きびしく、というのは、わたしが、どの位ものをかく上で常態に復したか、それが知りたいからよ。神経と関係のある文章の動きのリズムが弾力にとんでいて、リズミカルであるか、感覚が緻密か粗大であるかという点を、ね。書いている間には、自然で、なだらかに展開いたしましたが。ほんとに其がしりたいの。こんなに言葉が落ちるものの話しかたがのこっている以上、気になるのよ。あなたは余りお気づきにならないようだけれど。それが分るほど長くたくさんいろいろのことを喋る時間がないからなのね。長く喋っていると、ガタガタにしか発音出来ない音の重りがあります。却って口の方がそうなのだろうが。
でもね、私は、人前で喋々出来にくいことになって、いいと思うのよ。作家はかけばいいのです。喋らずといいわ。画家は描けばいいのよ。中川一政が、字で喋り、そのお喋りは絵よりも往々にして面白い。これは一大事だわ。ですからね。では明日。さむくないように。
一月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
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