た。ザル下げて月の光にてらされて、地べたに丸き影うつし。サバ二切(二人)。第二次夕飯のおかずが出来てよかったけれど。この間うち曇ってさむかったのが久しぶりで夏めいて月もいいので、白い浴衣の人かげが一杯出ていて、賑やかで、子供ははしゃいでサバとりの行進と思えない賑やかさでした。面白うございました。
 こっちのうちはどうするか分りません。けれどもわたしは行ききりにならないとしても早く動きます。そちら迄二時間かかるでしょう。新宿をどうしても通るのが、いやですが、どこからだって、何か門があるのですものね。
 あっちは紀という従弟が、いいよと云っていましたが迚もないと思っていたの、家なんか勿論ないのよ、ね。でもわたしは、あっさり食べ、勉強出来る生活ならその上のことは申しません、この時代の中で。
 経済的には忽ち大口くい込みとなりますが、そのときは又そのときのこととして、ともかく仕事出来なくてはその点も私としての本来的解決の方法が立ちません、自分として握っていてかけ合うものがなくては、ね。ですから先ず仕事をはじめる次第です。一冊ずつの計画でかいて行きます、作家論にしろ、文学史にしろ小説にしろ、ね。
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