ものなのね。いろいろな色どりがあります。そして、一つがふっと光ると、次から次へと、灯がのびてゆくのね。
きのうは、あの夕立と雹の嵐を見ながら十年の夏を思い出して居りました。ゴミゴミしてくさいところにいて、疲れのため、遠い夏空に立っている梧桐の青い筈の葉が黒く見えていました。同じような夕立のふった午後、わたしは打たれて膨れた頬っぺたを抑えて、雨と雹との眺めを見て居りました。それからとんで、わたしは何を思い出したとお思いになって? 可愛い仕合わせな汗もたちのことを思い出しました。
みんな薄赤いその汗もは、仕合わせものたちで、パフに白い粉をつけたのを、不器用らしい器用さで、パタパタとつけられました。
そして次には、水遊びを思い出しました。爽快きわまりないウォータ・シュート遊びを。玉なす汗を流しながら、好ちゃんは、何と強靭に、優雅に、飛躍したでしょう。夏の音楽は酔うように響いて居りました。よろこびの旗はひらめいて。
段々雨がおさまって樹のしずくの音が聴えるようになったとき、一つの詩の断片が思い浮びました。われは一はりの弓、というのよ。われは一はりの弓。草かげにありて幾とき。猟人よ、雄々
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