いところもあり、又反対に、緑郎とすれば、いろいろの場合、妻の処置について心がなやむでしょう。
ゴンクールの日記をよんだシチュエーションも面白うございました。わたしが風呂たきをしていたの、ひとりで。たきつけに古雑誌をすこし使います。そういう中からふと目にとまって立ちよみしたのでした、何処かの一寸した雑誌。パリの市役所に、義勇兵――国民軍募集のイルミネーションがつけられ、そこにぎっしりと男たちがつめよせて来ている情景などを、ゴンクールは鮮やかに、しかし同情なくその日記にかいて居ります。ゴーチェがこの敗戦で財産をすったとあわてて愚痴タラタラな姿もあります。政治上のこと[#「政治上のこと」に傍点]というつきはなした見かたです。
政治家というものの職業化それに伴う腐敗のために、政治を寧ろ清純な人物の近づかないものとして見る見かたは、現代にも多くの作家を支配していますね。たまに政治的であった男は、又人物の浮薄さを、後々に到って露呈したりして、なおその経験主義の偏見をかためてしまっています。
ここいらのこともいろいろ将来の興味ある課題ですね。「孫子の代」には、そういう偏見がためられ、常識がひろ
前へ
次へ
全357ページ中175ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング