で、十分それを御承知でなかなかおしゃれで、びんをこう出して、帯をしゃっとしめて、「後姿は、人も出て見るような」という話や、ね。おしゃれというのに二いろあって、表現的な精神の抑揚からのおしゃれはおもしろいことね。そして、わたしは、そういうおしゃれなら人後におちたくないと思います。おばあさんの御秘蔵であった小さいあなたに、おばあさんのそういう弾みのある人柄が何と感じられていたでしょうね。そういう姿美人の子だから、お父さんはお踊りになると、案外なしお[#「しお」に傍点]があったのでしょうかしら。お母さんはお父さんの踊上手がお自慢なのよ。御存じ? お父さんのお人柄のよさがそこに出ていると思って伺いました、どうしてあの武骨そうな人が、というようだったのですってね。
 鷺の宮は空気の気もちよい、林の畑の中の小さい町です。この間、着物とりに行ったらとうもろこし、きゅうり、なす、いんげん、じゃがいも等、家のぐるり一杯大きくなっていて、わたしの畑(!)がそぞろ哀れになりました。畑一つみても、力を合わせる者のあるところと、そうでないところの違いはおどろくばかり露骨です。この頃、どの家でも畑つくりをやってい
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