かざしの花については、万葉の諧謔も思い及んで居りますまい。御主人公の御機嫌という厄介なものをあしかけ三ヵ月かかって克服したと思ったらのみ奴にせめられ、泣かまほしです、却ってこっち(のみの方)が泣けそうだから大笑いね。ノミは実にいやよ。ちょこまかして、悪達者で。旦那様に云いつけるぞと云おうが、此奴め、ユリをくう奴があるか、とにらまえても、ノミの答えは一つでしょう、ピョンピョンはねろよチクリとさせよ、今がおいらの全盛時代、とね。ノミはドイツにもいると見えるのね。「ファウスト」の中でしょう? 蚤の歌。どんな神秘主義者にかかってもノミは「おいら」族ね、決して「われら」族ではないわ。南京虫はまけずおとらず穢い一族ですが、あれは徒党をくみ、集団的で会議をするようで「われら」風です。クロプイという劇をメイエルホリドが上演しました。すべての寄食的存在を表象したものでした。
 きょうは、朝すこしおそく起きたので大いそぎで御飯をたべないうち、トマトの苗を植えました。千葉のです。移すのには大きくなりすぎていますが、丈夫そうだからうまくつくかもしれません。そのトマトはね、春ほうれん草をまいて出なかった畑をもう
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