は冬になっても工夫してこの西洋乞食でやるつもりです。ずっと楽で疲れませんもの。尻尾のきれた丸い牝鶏姿は十年昔でお廃しと思っていたら、又々そうなってしまったと苦笑いたします。動坂の家へ、小さい風呂敷へつつんで、浅青のスウェターもって行って、チョコンと着て、浅緑の毬のようになっていたのを思い出します。あの緑の色は大変きれいだと思って着ていたのよ、尤もすこしよごれては居りましたが。
 さて、洗濯ものを乾してから、あなたの冬の羽織を、今年も多賀ちゃんに縫って貰うため、綿を出して用意いたしました。真綿なんて、何と無いものになってしまったことでしょう、これは即ち、去年のを又今年も使いますということなの。ことしは、御平常着と、外出用と綿の入ったものが二通りいるでしょう、それとも、そとのは、袷でどてらの上にお重ねになりますか? 枚数の点などでどちらが便利でしょうね、明日でも伺いましょう。折角風邪をひかさないように掛布団は出来ましたから、着物も間に合わないというようなことのないようにしたいと思います。
 小包作り終り、やっとやっと、という気もちで此をかきはじめた次第です。書くこと、読むこと、あれこれのこと、わたしはどうしてもつい、あれこれ時間が惜しくて閉口の時があります。だもんだから、何となし仙人くさい状態[#「仙人くさい状態」に傍点]になってしまって、それを世帯もちの眼から見ると、アラ、でも仕方がございませんわ、外になさることがおありなんですものホヽヽヽヽということになるのね。それでもまだまだわたしには比例がとれません、オホホホ式であってなお此だけ時間がかかるなんて、ね。うちの隣組をあっちこっち歩いて、全くびっくりいたします、どこのうちも、どうしてああなめたようなんでしょう。そのために一生を費している人々には叶いっこないと、率直簡明に、うちのオホホホを承認いたします、情熱がちがいますから。こうかいていて、はた、と思い当ったことがあります。思い当って、これは大変と思ったの。あなたは、もしや万※[#濁点付き小書き片仮名カ、442−6]一にも、ユリが、文章を、だ、だ、で終らなくなったのだから、きっと家もちも何となしあかぬけたろうなどと思いちがいしてはいらっしゃらないわね、大丈夫ね。わたしは、その前に坐って眺めて眺めて、眺めあかざるものがあったら、迚も台所をテカリとさせるために、立ち上ると
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