しくなり、あなたのおなかも、落付くように。今年は、人々がみんな秋を待っているでしょう[#「でしょう」は底本では「でししょう」と誤記]。みんな、力がない体に暑気はこたえたのよ。わたしは、明日あたりから又暫く注射をし、暑さまけで秋患わないようにします、そして又早寝励行はじめます、ほかの連中はどうあろうとも。わたしの体に早ねは有効ですから。
文武両道ということを思うにつけ、心の勉強と健康増進は切りはなせません。しみじみ思うのよ、弱くなってはいられないと。世界の潮ざいに耳を傾けると、それは丈夫でいなさい、丈夫でいなさいと波の音がいたします。そして、一貫した意志がいるということを語ります、小にしては、二つの身が丈夫でいるにも、ね。だからわたしは意志をつよくしてね、たべるものの不足な分は眠りで補うという原則にします。その日暮しに抵抗いたします。
しかしものごとの面白さは不思議です。昨今(この四日から)わたしの毎日は、全く落付いて手紙こうして書く時間が何日おきかにあって、あとはバタバタの連続です。そちらに行くには一時頃家を出て、大体帰ると五時―六時です。何時間か待つ間に本を読みます。この頃まとまって本をよむと云ったらその時間よ。そちらに行くときがわたしの一番インテレクチュアルな時間だというのは、余り当りすぎて笑止ですね。そして、わたしの「十年一日」は近所でも通っているから「また出勤の日ですから、すみませんが」と配給うけとりをたのんでも「御苦労さまですね」とひきうけてくれます、よくお出になりますね、なんてちくりとしたことは云う人がありません。そうして軸《ジク》が一つあるために、すべてが比較的まとまるのよ、家のものだって、わたしが、あしたは出勤よと云えば、それは絶対不変更となって居りますから。いい習慣がついたものね。わたしの健康だってこの軸にうけとめられて規律立つし、辛くても出かけますしね。鍛錬というのはちっと辛くてもやらなくては駄目の由(体操なんかでも)
きのうは暑い日でしたね、わたしは活躍して、きょう一日在宅なのを、どんなにうれしくたのしんでいるでしょう。
きのうは朝早く九段へ行きました。用談すまして十時すこし前からてっちゃんのところへまわりました。大人のジフテリーをやったのよ、入院しました。栄さんから電話のついでに其をきいて、早く見舞いたかったのに、丁度こちらの用が重っ
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