は、興味をうごかされました。糸車も漫画に描くよりはインドとして意味があるのですね、いろいろ感じました。ガンジーのつよさ、力の諸源泉、そのコムビネーションについて。キリスト以来というのは或は当っているかもしれません。インドには、全く、「いわれなくしていやしめられたる者」が充満しているのですものね。ガンジーの秘書をしているのはミス何とか云ってイギリスの海軍大将の娘の由。ミス一人の良心で、イギリスの歴史を償おうというのは、荷が重すぎるでしょうね。
 ああ、本当にどうしよう、思い切って一寸出かけましょう、かげって来たし。雨だと(あした)又こまるから。では、これで一寸おやめに。

 六月二十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 六月二十六日
 この頃は本当に御苦労さまね。心からそう思います。熱はあまり出なかったでしょうか。生憎むし暑くて体がもちにくいし。おなかをわるくしていて、この時候では大儀なことです。丈夫なひとでも、あれでは大抵やられるのよ。疲れのため安眠出来ないのではないかと思います。わたしはもとそういうことがあるとは知らなかったけれど、ひどく病気してから夜風呂に入ってさえ、眠れなくなることがあるようになって、そういうときの工合わるさ、御同情いたします。どうぞ、どうぞ御大切にね。
 咲ひさしぶりでしたろう? 二十三日に出て来たのよ。六時すぎてしまって、さてこれからもし御飯炊くのだったら閉口だとふらふらになって入って来たら、台所の外のカマドで火をたいているのが咲だったので、わたしはうれしくて、ウームああちゃん! よく来てくれたとうなってしまいました。あっこおばちゃん! どぉうした? 二人が抱き合うような「感激的場面」を展開しました。〔中略〕二十四日にはどうしてもと思って来たのですって。こういう思いやりのあることを咲がやってくれるからどうやらやってゆかれます。あなたも咲を御覧になって、やはり似たようなことお感じになりましたでしょう。咲と話したのよ。あなたは輪廓だけにしろ、私の暮しのあれこれを御存じなのだから、ああやって咲がいるの御覧になれば、マア、その調子ならユリもやれるところもあるだろうとお思いになるでしょうって。そして、それは只何年ぶりかでお会いしたというだけのことではない、生活のこころもちをあなたに感じさせ、どんなにいいきもちか分らないから、私もうれ
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