山からほり出して来たのよ。形はどうともあれ、今にしては大した良質のものだからホクホクです、書きよいのよ、そして私は手紙につかえるいい紙が見つかると一番上機嫌です。
風邪のかげんできょうの目といったらメチャよ。大チラつき。ペンさんがやっと結婚するようになりました。秋頃の由。対手は実業家の息子で帝大の経済出。日銀に居た人。ペンさんは高等小学を出てすぐそこで女事務員になり七年つとめている間にその人を知ったのです。中途でゴタついて、男のひともグラついたのらしいが、マア決着したわけです。高輪に壮大なる邸宅があってそれは借金のカタになっているが、妹が結婚する迄はその家をもって行くという処世術を守る家風です。なかなか楽ではないでしょうが、何年来も交渉があったらしいから、ちゃんと結婚というきまりをもって、生活のよさわるさを正面に経験して見るのはよいでしょう。
私はこの頃迎えや外出のおともをして貰っていますが、秋迄にはその用も一片つきましょうからお互にようございました。きょうはいくらでもこうやって御飯後のお喋りのような話をしていたいがあんまりな目ですからもうオヤメ。かぜをおひきにならないようにね。
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