ザックがかいた豹《ヒョー》についてのロマンティックな物語を書き直したりするところもあるが、大体はまともな記述をしています。それのリス物語を一寸よんだら(太郎のをかりて)リスの父親はどこやらリュックを背負って行く父さんの心持――自覚しないでそう動く心――に通じていて、ほほえまれます。一緒にだけ暮していると、こんな気持ははっきりそれとして生活の中に浮き上って来ないものね、彼にとって家族という感情の柱はどこに立っているかということを沁々感じ、そういう本能めいたものの暖かさと根づよさとを感じます。巣のぬくみ、その匂い、何かしらひきつけるもの。そういうものなのね、全くオカメがいないと落付けないのね、よりよく動いている部分があってもそれで落付けるというものでないというところが面白い。生活の日常性の粘りのつよさということも新しくおどろきます、自分の体温と体ぐせのうつったものがいつも恋しいというところ。
 この紙は妙な形でしょう? でも書きよさそうでしょう? 昔昔のタイプライターの用紙です、S. Chujo と父の事務所用で一杯いろいろ印刷してあるところを切ると丁度この大さになりました。この間、紙屑の
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