のようでした。思っていたあなたのお顔と一寸見ちがえるようにかっちりと厚みが出ていらして本当にうれしゅうございました、よかったわね。うちのひとは夕飯に赤飯をたいて私のよろこびを祝ってくれました。
 お手紙けさ着。大して疲れないらしいけれど昨夜は一寸苦しい位こたえたから今日は自重して、ほんの一筆。

 四月二十四日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 四月二十三日
 十九日のお手紙二十一日に頂きました。細々とありがとう。よくその気持でいそがず、着実に、永くなってもいらつかないでやってゆきます。どうぞ御安心下さい。これがこの頃の原稿用紙よ。私のこれ迄のは赤いケイで、それはひどく目にチラつくからこの色のをさがしたら松やで、こうです。一番細い万年筆で軽く書いてそれでこれ丈しみるのよ。毛筆の方がよいのでしょうが。
 今週は昨木曜日に出かけ来週は水曜日です。こんどはやや人並の話対手で、余程ましです。疲れかたが単純なのは大助りです。それに、そちらへ行くこともかまわないのだそうで、只私の体の疲労とにらみ合わせ、初めは大事をとってあしたもがまんして家に居ります。来週は或は金曜ごろ出か
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