しょうか。

(3ノ三)浅春の雪のすがすがしさと柔らかさを描こうとしたらしい絵で版がわるいから垣のむこうがゴタゴタして残念です。今まで知らなかった女性の絵です。この雪の下には砂地がありそうな感じですね。ぬかるまないような。ペンさんが奈良の旅行からかえり、寿江子国男国府津からかえり又ガヤガヤになりました。戸塚のおばあさんが死にました。手紙一つお見舞一つもらわなくて、そちらの事だけ「あらかじめ知らせ」られたりして、少しおどろきました。

 四月八日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(はがき)〕

 あしたの金曜日に出かけられると思って居りましたが、雨つづきで下稽古が出来なかったから、火曜日になります。どうぞそのおつもりで。

 四月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(木下克巳筆「夏の夜」の絵はがき)〕

 四月九日
 この頃いろいろと書きたくなって来ました。口で云ってかいて貰うというのではなくて。そうすると体力がまだそこまで行っていないことを沁々と感じ、ああまだ辛棒しなければと思います。結局口に出して書いてもらうということには随分限度があるものね。去年の秋から今日までの私たちの経
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