にお目にかかりにゆくだけで精々ですから。柄にないことはするもんじゃないと思ったそうです。そんな気持も亦時がたてば自然に戻るのでしょうが。こんな体で自分の勉強さえ出来ないのにと云っていて、私も気の毒だし心苦しいし、それで万一の場合私に代って事務的なことを計らってもらう人として、てっちゃんにたのんだのでした。家族的にももう知りあっていますし、順序がついていて、それを取計らうだけならいいと思って。五日ごろ寿江子が上ります。私はその二三日後に上りたく思って居りましたが、この手紙すっかりよんで頂いて、いろいろのことが分明して、私のわるかったことは悪かったとして、ともかくさっぱりして頂き、まあ来たらよかろうというお気持の向いた上で行きたいと思います。一心に、おぼろおぼろの眼を張って、私はおめにかかりたくて行くのだから、そして、あのほんの短い時間のうちに、ゴタゴタしたことは何も話せず、話せば中途半端でいかにも苦しいのだから、この一まとめの話がすんでからにいたしましょう。これは何日ごろ着くでしょう、長くてさぞ手間がかかることでしょう。早く来てよいと云っていただきたいと思います。
四月五日 〔巣鴨拘
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