私はそのちがいの間にこめられている事情を察していただけると思い、よかったと思っていたのでした。ちがいを説明しにくく、自分の気持だけ言い、二つを並べて客観的にお話出来なかったのは悪うございました。客観的な事情というものはわかっているのだから、二つをはっきり並べて話せなかったのが私のしゃんとしなかったところであったと考えます。
 自分の健康にほんとうに自信があるならば、病状についても平静に、さけがたい腫物はどう出来ているか、を話した筈ですから。御免なさい。私は骨髄癆になっていない自分をつたえたくて一方の事実を糊塗したようになり、そういう作家としても強靭さの不足したような、眼光の透らないようなところ不快にお思いになったのは当然であり、すまないことでした。私は子供らしかったと思います。自分の告げたいことだけを息せききって喋るように。話したい方からだけ、話しいい方からだけ話すというのも、態度としてはなっていないことだし、リアリスティックでなくて。本当に私たちの生活で、私はいつも平静な現実的な勇気をもっていなければならないと思います。余り長くなるといけないからここまでで一区切。今寿江子はコウヅ。ペ
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