見していない伸子は何とたよりなく、しかも内在するものに、ひしとすがって、彼女の道をたずねるでしょう。我々の女主人公を愛して下さい。あらゆる小作品の列が、大きい真空に吸い込まれるように次々と長く大きい作品の中に吸収されてゆく光景の雄大さ。これは私の生涯に於てはじめて感じる感動であり、芸術の大さであり、大きい芸術の大さです。大きい芸術家にとって、この大さは遙に大であると思うと、私は昔の天文学者がやっと望遠鏡をわがものとした時のようなおどろきに打たれます。これをかき通せば私もどうやら大人の叙事詩をもつことになるでしょう。
 体のよわさがまだあって、自分にとってまだ十分強固と思うに足りる自制力がなさそうです、仕事をしてゆく上で、よ。制作を遂行させるに大事大事な力が。ですからポツリポツリと考えて、感じを追って行ってゆっくり準備いたします。喉元にこみ上げるようなものがあります。何年この欲望をこんなに大切に、ひっそりはぐくまなかったでしょう。
 今私が病気であることの天の恵のいや深さ。あなたもブランカはブランカなりに恵おろそかならぬものと思って下さるでしょう? わたしの仕合わせは人間生活の礎の中に据
前へ 次へ
全440ページ中356ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング