えこまれていて、私が其を掘り起さなければ宝と知れない宝であるとは興味つきぬことです。
 気負けがおこると一大事ですから、もうあんまり小説についてのお喋りはいたしますまい。子供をおなかにもっている女のように、私は時々あなたに、小さな声でホラ、動いてよ、と告げて笑うでしょう。時には、手をとって丸い柔かい球なりのおなかの中に動くかすかな気配に黙って触れさせるでしょう。それであなたは万事を会得なさるのよ、母子とも健在なり、と。生れる迄、母親しかその存在も生長もじかには感じないという、いじのわるいよろこびを私はブランカらしく満喫しようという魂胆です。そして大いに神秘的になります。だって生命をうむものは神秘的なわけでしょう? 但、私の神秘さはヒステリーの全くの消失という、良人にとっての至福となって現れます。

 十月十九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 十月十九日
 又曇天になりました。いかが? こちらはずっと調子よくなおりました。木曜日ごろ上ります。
 きょうは一寸御相談です。Tの結婚について。あのひとはもう二十七八になりましたが、田舎では思わしいこともないらしくて未だにああ
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