い犠牲に立っています。泰子は無心だし、母の愛情は情熱的ですが、人の体の力は限りがあるから、母親も五年来の負担まけで、内面の疲労――精神生活の放棄――は著しく、それだけが理由でなかなか本質的には大した落しものをしつつころがって行く日常です。幸、咲枝はああいう気質だから、よほどましですが。尖らず、鈍る形で現れるのですが。こういう子をもつ親は誇張でなく試練的ね。特に母が、ね。同情をいたします。しかし私は、やはりこういう子供が母をくい、兄弟の生活から奪い、一家から奪うものの大さと深さとを感じ、可哀そうで又恐しさを切実に感じます。しかしこの怖しさを母は見ないようです。不具の子はいじらしいが、対策もあり、生活の目標も立てられます。泰子は真空ですからね。吸収してしまうだけ。辛労も愛も。
 現在三千軒ある出版業が、略《ほぼ》二百軒に整備される由です。文学、科学の各分科をみんな其々にふりわけて、専門出版店となるらしい話でもあります。文学書は『新潮』などのこるでしょう。『新潮』の出版部。
 関係あるところではそろそろ大童らしい風です。出版外交史というような小冊子も資料は十分ということになるでしょう。出版年
前へ 次へ
全440ページ中313ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング