云いながら爽快なところもあり。今のような時に自分の借金を左右に見てその間をかけずりまわってばかり暮している人は気の毒だと思います。地球は廻って居り、星は空にきらめき、朝日は東に美しく出ます。
二週間経ってからと云えば、八月も半分すぎます。その頃又出かけて見ます。スラスラとつくのか、たまるのかよく分らないけれど、わたしの心持とすると、云わば、大して納涼にならない団扇の風でも送ってあげようというようなわけでハガキなどちょいちょい書きましょう。いい絵はがきもないこと。てっちゃんが、この三ヵ月ほどつとめていたところをやめることになりました。先生というものは弟子が好きなのね。はッ、はッという。そんなこんなのいきさつでしょう。学者というより仕事師の下ではつづきますまい。あのひとも世間も知って来て、仕事師というような人間の型がはっきり分って来たから、無駄はありません。
『女性と文学』という本貰いましたから一寸お目にかけましょう。引出しの一つ一つに目先のちょっとちがった小布《コギレ》がつまっていて、ひょっと目をひかれるような気の利いた、柄の面白いようなスフではないものが入っている、しかし小布であり、
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