でしょうが、どっちかというと一色の糸をたぐって立体的筆致でないところあり、『インディーラへの手紙』の生彩を欠いたようなところもあります。作家と歴史家との相異、ネールは歴史家の素質によりゆたかということになるかもしれません。執筆の年代は、世界史のすぐあとですね、一九三四―五ですから、前の方は三一―三三です。彼の大部な著作はみんな一定の生活条件のもとであり、これもそうでした。書けたのです。割合スピードを出してよんで、お送りしようと思って居りますが、いかがでしょう。
 隆治さんのことは心にかかります。稲子さんにしろいいときかえったので、なかなかかえれない由です。どうしているでしょうね、たよりのないのは、当然というようなわけらしいし。益※[#二の字点、1−2−22]そうのようです。どうしていても無事ならば、と願います。自分の力で収拾のつかない事態に対して、冷静で、過度の責任感に負けたりしないようにとどんなに願うでしょう。小心の変じた勇気は痛ましいものですから。それよりは豪胆であることを願って居ります。本当に丈夫で、持ち越すように。
 昨今なかなか面白いこともあって、はげちょろけの浴衣でフーフー
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