はないわけです。魔力の無限の跳梁と思えば身の毛もよだちますが、少くとも天候というものを知ってその科学を学んでいれば、ホホウというところもあり、おのずからの笑いもあるわけね。相当荒れるわいというところもあったり。面白さというのはそこのところね。
 栄さんは、きのう午前の大雨のなかを、農業試験場の田植に行きました。文学団体の農民文学委員会の主唱の由。新聞に出ています。
 いろいろ眺めていると、仕事の忙しさよりも、仕事をしてゆけるようにしておく為の忙しさというようなものが非常ですね。これ迄、作家たちの大部分は恣意的に暮してごたく並べていたから、大洗濯うけるのも結構でしょうが、それでもやはりすこし教養のある人たちの使われかたと、体だけでの使われかたとあって、大変です。栄さんは御主人が二百円ほど月給があるから、先の暮しでしたらやってゆけるのでしょうが、何しろ新築した家のため、月百円以上償還してゆかなければならないそうで、これは現在大した負担でしょうと察します。悲喜劇です。同じ儲けるにしろI・Tのように出版インフレの先駆けをやって良心なんかてんでもち合わさない儲けかたをして、安気に理想たる芝生のあ
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